映像化不可能な小説No.1がついに映画化
1993年6月、登山家でカメラマンの深町誠はネパールのカトマンドゥにいた。2ヶ月前の4月に仲間たちと共にエベレスト登頂にチャレンジするも、登頂は断念、その上、滑落による2名の死亡者を出して、下山する事になってしまったのだ。
他の写真の撮影があるため、帰国する仲間を見送った深町だったが、あまり仕事に手がつかず、あてどなくカトマンドゥを歩いていた。そんな中、偶然訪れた中古登山用具店で、とんでもないものを発見する。1924年にエベレストで行方がわからなくなったイギリスの登山家、G・マロリーが持っていたカメラと同型のものが店頭に並んでいた。もし、本人のもので登頂時の写真が見つかれば、「マロリーは登頂前に死んだのか、それとも下山中に死んだのか」という長年議論になっていた、エベレスト人類初登頂の記録が塗り替えられる大発見だ。興奮した深町は真贋を確かめるためにカメラを購入したのだが…。
多彩な作風で読者を魅了する夢枕漠が壮大なスケールで描く、山に命を懸けた男たちの生きざまに息を呑む山岳叙事詩。
電子書籍ランキング.com 編集部T
みんなの感想
◆続きが気になり一気に読み切った
最初はカメラを巡るミステリーに始まり、伝説の登山家を追って展開するサスペンス、そしてエベレストに挑む男たちのドキュメントと様々な方面にストーリーが移り変わり、色々な要素を内包した小説。それでも一本のストーリーとして完成度が高くスッと入ってくるので、一気に読み切ってしまいました。テレビなどで観るエベレストの映像から、想像できないような過酷な世界が描かれていて、クライマックスでは思わず、頑張れ!と思いながら読んでいました。
◆細かい山岳描写に思わず唸る
物語の途中に記載されている山岳関係の歴史や登場人物たちの話など、フィクションの中に史実をうまく入れて、キャラクターにリアリティを持たせるには、膨大な調査が必要だったと思われる。また、登山中における情景や登攀者の精神状態の描写など、こちらが感情移入してしまうような没入感があって、物語にどんどん引き込まれた。特に、ネパールのカトマンドゥでのシーンと、エベレストでの極限状態の描写登攀シーンを比べ、おなじネパールの中で出来事かと思うと、物語である事を忘れて自然の脅威に唸ってしまった。