今が旬 2014年6月全国ロードショー 直木賞受賞作「私の男」
桜庭一樹の第138回直木賞受賞作、「私の男」は一言で言えばねっとりとした作品です。桜庭一樹はどちらかというとダークな雰囲気を持つ作家ですが、この「私の男」は親子の近親相姦、殺人という罪を犯したふたりの話なので、桜庭一樹らしい作品と言えるでしょう。もう一歩のところで直木賞受賞を逃した「赤朽葉家の伝説」よりもさらにダークな雰囲気が深くなっています。
はじめにヒロインの結婚シーンから始まるのですが、幸せなはずの結婚シーンが何故か幸せそうに見えない、そこから物語は過去へとさかのぼって行きます。読み終えるとすべてが分かり、そうだったのかという読後感と虚無感に襲われる小説です。救い難く、重く、苦しいテーマの中で、筆者の大きな筆力をもってグイグイと読者をひきつけ、ラストまで読み切らせてしまう本だと感じました。本来苦手なダークな系統の本なのですが、続きが気になって読み切ってしまったという人も多くいます。好みの分かれる小説だと言えます。著者の桜庭一樹はとても可憐な女性なのですが、見た目と作品のギャップがあり、驚かされます。
ちなみにこの「私の男」は浅野忠信、ヒロインを二階堂ふみのキャスティングで2014年6月映画化されていて公開ほやほやの今がまさに旬といった作品です。