星雲賞受賞 近未来の月面開発
『第六大陸』は小川一水による小説です。第35回星雲賞(日本長編部門賞)を受賞したハードSF小説です。
2025年を舞台に、月面開発プロジェクトの中心を担う主人公が様々な経験を積んでいく物語です。ジャンルとしてはSF小説ですが、主人公は建設会社の社員であり、近未来の描写も極端なものではないため、SF初心者でも読みやすい内容となっています。タイトルは月を第6の大陸と見立てて、月面開発という本作の主題を表したものです。
見どころのひとつは2025年という時代の描写です。この作品の中では未来は比較的平和なものとして描かれています。人類は協調しあい、宇宙で新たな資源の開発を進めています。また地球上ではレジャー用の深海交通艇が海底を行き来するなど、レジャーに力を入れるようにもなっています。月面開発プロジェクトもレジャー企業の命によるものです。
設定に関しては賛否両論があり、予算面などは現実的にみると甘すぎるという声が既読者から上がっていますが、そういった難点を含みつつも、ワクワクしながら読めるという点では近年まれにみる良作です。
人物描写も優れています。主人公が月面開発にまつわり苦悩する様子や乗り越える姿をうまく描いています。依頼主であるレジャー企業の孫娘で月面開発プロジェクトの発案者である桃園寺妙をめぐる恋愛模様にも注目です。