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第1回 WEB書店が勝ち残るポイントはこれかな?

永江一石の電子書籍ダイアリー

第1回 WEB書店が勝ち残るポイントはこれかな?

2016年5月25日

毎週火曜日は「永江一石の電子書籍ダイアリー」と題しまして、電子書籍にまつわる事柄についてご紹介していきます。WEBコンサルのプロとして、ビジネス成否の責任を負う経営者として、ひとりのブロガーとして……。永江氏の、読書体験や電子書籍所感を語っていただきます。
記念すべき第1回は、日本のWEB書店マーケットについて分かりやすく解説していただいています。

まず、現況だが、日本のWEB書店のマーケットはAmazonがほぼ占有している。Amazonの日本での売り上げから乱暴にこちらのエントリーでは推測したが、日本のAmazonの売り上げ全体はそごうや高島屋と並び、書籍だけならTUTAYAに匹敵する。別にAmazon便利だから買えばいいじゃんというならそれで終了なのだが、ご存じの通りAmazonはアメリカの企業が我々に販売する形を取っているので日本には消費税を納めていないと言われている。このまま売り上げが数兆円規模(いまは7800億)になると、自分の老後が心配なのでできれば日本の書店で買いたいのだが、以下の理由で日本軍はめちゃ苦戦していると思われる。

1 検索結果にほとんど出ない

たとえば「路傍の石」という山本有三の名作で検索すると、上位に出てくるのはAmazonである。※Chromeのシークレットモードで検索してます
日本のWEB書店はほとんど出てこない。個人ブログより下。数ページ目になってやっと出版社の直販サイトが来る。内容がオリジナルとされているからだと思います。
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ベストセラー「バカの壁」でも同じ現象だ。
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何万ページものページ数があり、頻繁に更新もされている日本のWEB書店各社が、検索から省かれたようになっているのである。たまに紀伊國屋が出てくる程度なのだ。
前にも書いたけど、一般的なECサイトでは訪問者の40〜65%が検索からの流入です。つまり検索結果に出てこないとそれだけ導線が半分以上断ち切られる。アドワーズみたいな広告では本はペイしない。これでは売り上げは上がらないでしょう。

検索に出てこない理由はいくつかあると推測されるが、まずはこちらのエントリー

楽天やりながらオリジナルサイトを始めるのが、SEO的にかなり厳しい件

に書いたように、ほとんどのコンテンツがコピーと見なされているのではないかと思われる。つまり出版社からのリリース(「BOOK」データベースなど)をそのまま商品説明にしているケースが多いから。Amazonの場合は1ページに商品説明だけではなく、ユーザーのカスタマーレビューやレコメンドも多く入り、全体に占める本の解説部分が少なくて薄まっているのだが、大半の日本のWEB書店は本の説明だけが多い。出版社の直販サイトが上にくることを考えると、やはりコピーとして認知されているじゃないでしょうか(このへんSEO専門家のご意見お待ちします)。
電子本でも同じで、AmazonはKindleを最優先して販売開始してもらえるようにいろいろな施策を行っている。結果として掲載が早い。最初にAmazonに掲載されればそれがオリジナルとしてインデックスされるので、他のスタンドが販売開始しても検索に出にくくなるのである。

2 自社のアフィリエイトシステムがないのでまともに戦えない

次に考えられるのが、Amazonが自社でアソシエイトというアフィリエイトサービスを持っていて、これによって膨大なバックリンクを稼いでいること。Amazonのアソシエイトのリンク先は「rcm-jp.amazon.co.jp」でサブドメインだから、正確には別サイトなのだが、何百万、何千万もの外部リンクがあるのでドメイン自体が最強になっているのではないかと勝手に推測しております(このへんSEO専門家のご意見お待ちします その2)。
こうした自社アフィリエイトは、「物を売る」ためだけだと思いがちで、アフィリエイトの広告代理店を通している書店が多いのですが、実はECの根幹である検索からの顧客の流入に非常に大きく貢献するということを、忘れているか知らないのだろう。さらに書評を書くには設定が面倒で非常に使いづらい。
たとえば「路傍の石」をAmazonのアフィリエイトで貼るなら、
Amazonで路傍の石を見つける → ログインしていれば左上に「このページへのリンクを作成」がでる → クリックしてコピペ
で終わるのだが、BookLiveで同様のことをやろうとすると
リンクシェアにログイン → リンクの作成 → Bookliveを選択 → リンク → リンク種類 → 商品リンク → 本、書籍を選択 → 路傍の石で検索 → 出ない → ふざけんな、二度と使わねぇ
なんであります。ブログ飯でも食ってるならまだしも、普通に仕事しながら書いてる我々にとっては面倒で使う気にもならない。というわけで使ってる人もほとんど見たことないのです。みんな簡単に設定できるAmazonを使って当たり前です。
以上、ここまでで日本軍が竹槍でB29に立ち向かっている悲壮なシーンが皆さまの胸に響いたと思います。ではどうするか、です。我々日本人には「勤勉さ」という世界一の美徳があるじゃないですか。

◆本の説明はオリジナルで書き起こそう。できれば署名入りで!!
一般書店では書店員が本の説明書いてPOP作ってるではないか。何十万冊あろうとも、売れ筋くらいは実際に読んで書き起こしたっていいじゃないか。ユーザーはそれにきっと愛を感じると思う。頑張ってる感も絶対に伝わる。なんだったらネットでライターを募ったっていい。または本の説明は食べログみたいにユーザーが勝手に書くスタイルだってありだと思います。とにかくオリジナリティを高めること。

◆オリジナルのアフィリエイトシステムを作るべし
本気でWEB書店をやるなら、まずは書評に特化したブロガーが使いやすいアフィリエイトのシステムを作ってください。実はアフィリエイトシステムってそれほど難しいわけでもない。上級エンジニアならさくさく作れるでしょう。10数年前に私の会社で開発したECのASPでも各店舗が設定できるアフィリエイトシステムを搭載していた。もちろんお金で返すとなると大変だが、楽天みたいにポイントで返すなら簡単なはず。ブロガーが自分で欲しい本はそれで買うわけです。本好きならけっこう使うでしょう。
アフィリエイターは使うわけ無いが、ブロガーは誰もが金のためにアフィリエイトリンクを貼るわけでは無く、コンテンツのひとつとして使う人も多いので、「コンテンツとしての使いやすさ」の1点に注力します。
リンク先はサブドメインにしないで、rootディレクトリの下に置きます。ブロガーが使いやすいように、設置サイズの設定を自分で決定したり、自分の批評が書けたりするものにするとか、とにかく書籍紹介に特化する。大手のベンダーだと何千万とか言われるかもしれませんが、もっと安くいいのを作ってくれるエンジニア会社はたくさんあるはずだ。

◆インフルエンサーに献本しまくろう
実はこの間、このエントリーで紹介した本が、さっき見たら累計で100数十冊売れてました。わたしのブログごときでそうなのだから、ホリエモンとか、やまもといちろう隊長とか、佐々木俊尚さんならどうなるもんだか空恐ろしい。
自社で一押しの本なら、こうしたスーパー級のインフルエンサーに献本しまくればいいじゃないですか。著者から献本すると簡単なAmazonにリンクされちゃうので、自分の書店から献本。採用してくれる確率は小さいかもしれないが、丁寧な手紙を付けてひたすら送れば、1回くらいは書いてくれるかもしれないじゃないか。その破壊力を持ってすればかかるコストなんて屁ですよ。
ここまでやっても、圧倒的な物量の巨人Amazonには勝てるわけはないと思う。しかし負けないようにはできるはずだ。「生き残るためには手を動かせ」なのです。ベトナムが米軍に勝利したように、ゲリラ戦で挑むしかないということをもっと理解した方がよろしいかと思います。
昨日紹介した自衛隊のUS-2関連の本とかDVDとかプラモとか全部売り切れ。あたまにきてコレ買いました・・・
二式大艇空戦記―海軍八〇一空搭乗員の死闘 (光人社NF文庫)

(次回は、5月31日掲載予定)

「永江一石のITマーケティング日記」2013年6月25日よりhttps://www.landerblue.co.jp/blog/?p=7324


永江一石

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