ページ開けば地獄絵図、「丸尾」が描く芋虫
『芋虫』は、丸尾末広の作品(江戸川乱歩原作)のマンガ作品です。2009年月刊コミックビームにて掲載された作品に加筆修正を行い単行本化されました。
「カルト的人気作品」という言葉の定義をを考えたとき、「広く大衆の支持は得ることはできないが、一部の熱烈な支持者がいる作品」と捉えることができます。では、カルト的人気漫画家を挙げよと尋ねられた場合、私は迷わず本作「芋虫」の作者でもある『丸尾末広』の名を挙げます。
丸尾末広、彼の作品を知っている人にとっては、漫画家であり絵師であり、独自の才覚がある作家であると、ある種「尊敬の念」さえ抱いている人が多いのではないでしょうか。一方で、その作風に激しい嫌悪感を抱く方々もいることでしょう。
さて、そんな丸尾末広の大正的エログロナンセンス全開の本作「芋虫」でも、我々読者に存分に見せつけてくれています。絵は表紙からも分かる通り、独特の美しさと独特のおどろおどろしさと狂気が孕んだ作風です。
内容はというと将来を嘱望されたが須永が戦争で四肢を失う、それを支えかつ弄ぶ妻の目線で物語が進められていきます。この芋虫は、ページをめくる度に丸尾ワールドに引きずり込まれる悪魔の魅力を持つ作品です。その独特な構図、地獄絵図(見たくないけど見てしまうグロさ)、そして淫靡さ。江戸川川乱歩の原作にマッチした丸尾世界が堪能できる漫画作品です。