後味を引くような読後感!優しさと不気味さが同居する力作
蟲師は、漆原友紀の漫画作品で1999年にアフタヌーンシーズン増刊で連載、後に誌面を変え月刊アフタヌーンで連載された人気作品。2005年10月にはフジテレビ系列でTVアニメ化され、また2007年には『大友克洋』を監督に、主演『オダギリジョー』によって実写映画化もされました。さらに原作開始から15年後の2014年4月には、独立局やBSなどで続章がアニメ化されています。
蟲師は、作品としての客観的評価も高く、文化庁メディア芸術祭・漫画部門優秀賞や2007年には文化庁メディア芸術祭「日本のメディア芸術100選」マンガ部門に選出されています。また第30回講談社漫画賞・一般部門受賞の作品でもあります。
基本的に、主人公のギンコとその知り合い以外の登場人物は繰り返し登場することはありません。一話一話違った人物・蟲を扱っており、不思議な懐かしさと寂しさを感じさせます。読んでいると、主人公のギンコとともに各地を渡り歩いているような気分にさせてくれる作品です。
蟲とは、妖怪や幽霊とはひとくくりに出来ない、原初の存在であり、形や存在する場所も様々です。そんな存在の蟲に人が接触したときに、何らかの影響を及ぼします。それを解決していくのが蟲師のギンコです。日本の昔話や伝承に出てきそうな村や町を舞台にしており、とても静かな雰囲気のある作品です。
地味と言ってしまえばそれまでなのですが、見どころでもあります。盛り上がる戦闘シーンなどのテンポの良さはありませんが、蟲への畏怖を感じつつじわじわと読む人を作品世界に引き込んでいく魅力を持っています。
また、静かな雰囲気を醸し出す作風ですが、だからといって「ほんわか」とする作品ではありません。後味の悪い最後になる話も多く、そこも蟲への恐ろしさや不気味さを感じさせる一因となっています。読後に必ずしもスッキリした晴れ晴れしい気持ちになる作品ではありませんが、後を引くような独特の読後感がある本作は紛れもなく名作と呼ぶにふさわしい作品ではないでしょうか。