勝利かっ!破滅かっ!巧みな心理描写に括目せよっ・・・
賭博黙示録カイジは、「アカギ」や「天和通りの快男児 天」などを生み出した福本伸行の作品で1996年~1999年まで『週刊ヤングマガジン』にて連載された人気漫画です。TVアニメ化や藤原竜也主演で実写映画化もされました。
この漫画は、うだつが上がらず、基本的には良くないことが起きれば他人のせいにする屑人間、そして不運な主人公「伊藤カイジ」が、作者福本伸行の考案したオリジナルのギャンブルに挑み、手に汗握る勝負を繰り広げながら、現状の打破を目論む物語です。先の見えない勝負に、カイジはロジックを積み上げながら、まさに命をかけて挑みます。
グー、チョキ、パーの三種三枚のカードのやり取りで行われる「限定じゃんけん」
地上数百メートルの高さで、電流の流れる長さ30mの鉄骨を渡らなければならない「人間競馬」
皇帝・奴隷・市民の手札を使い勝利を競う「Eカード」
これらは、作者が作り出したゲームですが、ゲームとしての出来栄えが良く巧みで、そのゲームの定石や攻略法までもがまるで世に存在するゲームが如く考えられ作りこまれています。このゲーム=「命を懸けた賭博」の出来も良いのですが何と言っても見どころは登場人物の心理描写です。賭博黙示録カイジはシリーズ第一作目の作品ですが全てのカイジシリーズ、否、福本シリーズ全般についていえることですが心理描写が極めて巧みなことです。
お金を失っていくことの恐怖に目の前が歪んでいく様や、己の甘さから招いた後悔してもしきれない生死にかかわるミスには、涙を流しながらの後悔と無様な己への叱責など見ている者への感情を大きく揺さぶります。
一枚絵を描かせたとしたら「福本伸行」は上手い作家であると多くの人が認めることはないでしょう。しかし漫画を描かせれ、上手いマンガ家であることは、このカイジを見れば一目瞭然です。後戻りができない、進むことしかできない破滅と勝利の瀬戸際を是非『賭博黙示録カイジ』で堪能してください。