作者失踪にて打ち切りのカルト漫画
『超劇画 聖徳太子』は、ふくしま政美(画)/滝沢解(原作)の劇画漫画。1977年より『週刊漫画サンデー』にて連載されていましたが、17話終了後に作者の「ふくしま政美」が失踪したため「未完」で打ち切りになりました。これだけでも「いわく」ありげな作品に思えます。まずこの本の何がすごいかと言えば、目次にて失踪したため未完ですとの注意書きがあり、冒頭より「おいおい・・・」とさせてくれます。これだけでもカルト作品好きには、ページをめくる指が止まらなくなることでしょう。なお、2014年11月21日より楽天koboでも作品が読めるようになるとのことで、ちょっとした旬のカルト作品なのかもしれません。
本作の題材は、タイトルにある通り「聖徳太子」なのですが、聖徳太子の生涯を綴った伝記的な作品ではありません。蘇我氏に実権を奪われ一族を滅ぼされたことに怒り、あの世から復讐に戻った聖徳太子が活躍するお話です。聖徳太子と言えば、やはり賢いイメージが強いですが、この太子は『ギャグ漫画日和』に出てくるような太子ともまた別物です。何か問題があれば「おぞましいほどの筋肉」で解決します。殴る蹴る、相手の頭を木端微塵に粉砕する等、世紀末に君臨するヒャッハーの如く超絶バイオレンス作品として仕上がっています。
この世に復活するシーンなどは、霊体である太子が女性器から体に入りこみ臓物をぶちまけ、腹を裂き復活するなど、その描写はグロく読み手を選ぶ作品であることは間違いありません。ですがその後に展開されるバトルや超展開は並の作品では、そうそうお目にかかれるものではありません。
許可なく生き返った(黄泉帰り)聖徳太子に対して地獄から追手が差し向けられます。この地獄は、鬼などが跋扈する世界ですが、兵器、通信設備などは超近代化されております。また太子は、追手であるメカロボットや尻や魔羅から変なものを出す醜男や醜女A型攻撃用ドドブスなどに対して奮戦を繰り広げます。しかし力及ばず捕縛され閻魔大王の御膳に連れて行かれます。
そこでは聖徳太子と閻魔大王が唾(痰?)やしごいた男性器から放出される謎の液体で戦う「超絶バトル」が繰り広げられます。その後ヒロインとなる弁財天の登場や閻魔大王から地獄を解放しようとしている釈迦族との核戦争などが起こり地獄が崩壊します。
最終的には太子の作った人工生命体に弁財天や閻魔大王が衛星軌道上に打ち上げられたりしているさなか「未完」というページと共に作品は終了してしまいます。
この作品は、無駄に漲るパワー全開の漫画です。そして収拾のつかないわけのわからない世界に我々を誘ってくれます。カルト漫画の最高峰作品と言っても過言ではないでしょう。