名作ゲームが原作の法廷バトル映画を小説で!
主人公は新米弁護士の成歩堂(なるほどう)龍一。弁護士の資格をとってまだ3カ月、はじめての法廷に緊張感満載で挑む場面から物語が始まる。
普通と違うのは、弁護士としての初仕事が殺人事件で逮捕された友人の弁護、ということである。被告人は小学校以来の親友、矢張(やはり)政志。大のお人好しで、日頃からトラブルに巻き込まれることが多い人物。被告人は恋人殺害の容疑をかけられる。状況は弁護側に極めて不利である。事件の前日に被告人と大ゲンカするところが目撃されており、アリバイがない状態。さらに殺害現場である被害者の部屋から出て行くところをみた、という目撃証言もある。
まさに四面楚歌な状況の中で主人公はどのように裁判を「逆転」させ弁護していくのか? そして謎に包まれていた15年前の殺人事件との関連と真相は? 裁判所という舞台で次々と証拠や証言が「逆転」され、真実が明らかになる。
本作品は映画「逆転裁判」の脚本をもとに筆者が書き下ろしたノベライズである。著書の大石直紀は98年、日本ミステリー文学大賞新人賞をはじめ数々の賞を受賞している。ゲームの「逆転裁判」の内容に忠実であるが、より本格的な推理小説として描かれた作品に仕上がっている。
みんなの感想
◆ゲームを知らない人でも楽しく読めます
逆転裁判はニンテンドーDSのゲームで一時期はまっていました。ゲームにあった独特のちょっとゆるい隙間や個性的なキャラが好きで、1〜5までシリーズやりつくしました。ゲームを本にするって映像もないのにどうするんだろう、原作の良さがなくなっていたら嫌だなと思ったのですが、違和感なく面白かったです。笑いの要素が減ってはいますが、小説になると足りなかった心理描写や経緯が埋められてグッとリアリティが増しています。ゲームを知らない人でも推理小説として楽しく読める作品だと思いました。
◆被告人を信じるということの意味
主人公の上司、千尋の言葉がとても印象的でした。「被告人が有罪か無罪か、私たちには知りようがない。弁護士にできるのは、彼らを信じることだけ。彼らを信じるということは、自分を信じるということなの。成歩堂くん、もっと強くなりなさい。自分で信じたものは、最後まで諦めてはダメ。」 今までは弁護士は悪人の味方、という印象がなんとなくありました。でもこの本を読むと検察側と弁護側双方の立場、真実を求める姿勢は同じなんだなと理解することができました。