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手塚治虫の鉄腕アトム(電子コミック)

手塚治虫の鉄腕アトム(電子コミック)

鉄腕アトム 【電子コミック】

著者 ページ数 クチコミ評判
手塚治虫 215ページ ★★★★★

大人になってから見ると印象の変わる作品

手塚治虫は数多くの名作を残しましたが、氏の代表作といっても過言ではないのがこの『鉄腕アトム』です。本作は1952年から1968年まで『少年』にて連載された作品です。手塚作品は、アニメには表現されていない「陰」の部分を持ったものが数多く存在します。「ジャングル大帝」では、生物は他の生き物を食べて生きるという「業」をレオ自身が体現しました。「海のトリトン」の原作「青いトリトン」では、異種間では理解しあえない面も厳然として存在することが示されました。

では原作では描かれ、アニメからは垣間見ることができない陰の面とはいったいどういった面でしょうか。よく言われるのは、ロボットの存在に仮託された人種差別問題です。人種差別は一見根拠の無い優越意識に由来していると思われがちですが、それは裏を返せば恐怖によるものです。自分が取って代わられるかもしれないという恐怖を打ち消すには優越意識にすがるしかありません。ですから、優越していることには何の科学的根拠もありません。なければかつてのナチスのように作り出さなければならなくなります。

 しかし、ロボットは人間より優れた面を持った存在です。人間の機能を発達させて外部化するために作り上げたのですから当然なのですが、優越意識から差別できないだけに、この作品でのロボットへの差別意識はより歪んだ、深いものになっていくのです。改めて読み返してみて、アニメの晴れ晴れとした主題歌とはかけ離れた世界が見どころではないでしょうか。



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