あの半沢直樹シリーズの第4弾
池井戸先生待望の新作「銀翼のイカロス」。テレビドラマの印象が強いため、小説を読んでいてもあの強烈でエッジの立った登場人物たちが頭の中で動き回っていました。さて、今回の「銀翼のイカロス」ですが、既に2度も再建計画を受け業績悪化が著しい民間航空会社の帝国航空だったり、新政権となった進政党など、読んですぐに「ああ、このモデルはアレだな」とわかるくらいわかりやすい会社や政党が登場します。
分かりやす過ぎるので逆にガッカリしちゃったんですが、読み進めるうちにそれが逆に強い感情移入へと変わっていき、熱量を持って最後まで読むことができたと思います。(池井戸先生はその辺は意識的にやっているのかな?)
今回の半沢直樹の敵は、その帝国航空を巡る進政党の政治家である白井国土交通大臣、党の重鎮である箕部議員、そして白井大臣が打ち出した「帝国航空再生タスクフォース」というプロジェクトのリーダーである弁護士の及原、などといった面々。
帝国航空の債権の放棄を半沢たちに叩きつける及原弁護士たちと、債務をしっかり弁済して自力での再建を目指す方向性を掲げる半沢たち、という構図になっています。
その中で、政治家と東京中央銀行側との不正融資であったり、互いが顔を揃える議決の場面であったり、ギリギリの場面で仲間たちの助けにより半沢が九死に一生を得たり…といったこのシリーズではもうお馴染みとなったシーンが登場します。
さすがにここら辺の展開は毎回同じだなあ、と感じてしまい、これまでのように読後もハラハラドキドキが止まらないようなことはなくなってしまいました。
半沢の活躍は安定感があるというか、期待通りの「倍返し」が気持ちよくもあるのですが、今回この「銀翼のイカロス」で半沢以上に自分の中で輝いて見えたのは、東京中央銀行の中野渡頭取の存在でした。
具体的なことは実際に読んでいただいて感じてほしいので、ネタバレするようなことは書けませんが、“生き様としての決断”というものを教えられたような気がします。
半沢の核心を突くような鋭い言葉の数々は、確かに読者の心に突き刺すものですが、そのような活躍は中野渡頭取のような存在があってこそだと思います。『下町ロケット』からの池井戸先生ファンという新参者ですが、これからも半沢直樹シリーズはもちろん、池井戸作品を愛読していきたいですね。
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