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預言者ピッピ

地下沢中也の預言者ピッピ(電子コミック)レビュー

預言者ピッピ 【電子コミック】

著者 ページ数 クチコミ評判
地下沢中也 96ページ ★★★★☆

北京で一匹の蝶がはばたくと、翌月ニューヨークで暴風が発生する

『預言者ピッピ』は、『パパと踊ろう』などの代表作を持つ『地下沢中也』の作品です。1999年の4月に発売された『COMIC CUE』(コミック キュー)Vol.6から連載されている作品ですが、残念ながらCOMIC CUEは2003年のVol.300以降、実質休刊状態で「預言者ピッピ」の連載誌が無くなってしまいました。しかし2巻に収録されている最終話がそうであるように描き下ろしで物語は継続されているようなので続巻の刊行が待ち遠しい次第です。

本作は、科学の粋を結集して作られたデータ分析予測システムのピッピ(アンドロイド型)が、大規模地震から多くの人を救うために、地震の予知を行うエピソードが軸となりストーリーが進行していきます。

本作の見どころとしては、「カオス理論とその先にある世界」といえるでしょう。有名なカオス理論のたとえ話で「北京で一匹の蝶がはばたくと、翌月ニューヨークで暴風が発生する」といったものがあります。つまり「とあること」が影響して「とある結果」が引き起こされるというモノ。このカオス理論の現実的な予測が可能となった場合、世界はどうなっていくのか・・・が本作の物語の核心であり、そんな世界観を見せてくれる傑作SFマンガです。

ピッピによる地震予知は、世界中の大規模地震をつぎつぎ的中させ世界中から支持を得ます。ピッピは、答えを求められれば(データさえあれば)計算を始め、そこからもっと確実性の高い未来を提示してれくれます。

この高性能な予測システムを地震予知だけに使っていてはもったいないと、ピッピの発明者である瀬川が禁じていたにもかかわらず地震以外を予知する制限が解除され、さまざまな問題の解析や予測を行うようになります。ピッピの解析による予知・予測は、まず外れないレベルの的中度にまで到達します。これにより例えば、難病と言われていた病気の治療法など解析されつつあり、人類は幸福な方向へと導かれていくかのうように思われました。

しかし発明者である瀬川は、不安を覚えていました。その不安とは、ピッピが人類の行き着く未来を予測してしまうことです。その予知を知らされた結果、人はあらぬ方向に進んでしまうのではないか、自主性を失うのではないかなど「人が人であることを放棄してしまう」のではないかということに不安を覚えそして警鐘し続けます。そして博士の第一の不安が的中してしまいます。ピッピは、人類の未来予知をしてしまいます。

ピッピは、人類が今のままでは近い将来に確実に滅ぶと伝えます。助かるには人類は進化するしかないと。「進化」か「絶滅」そんな神託のような預言とほぼ時を同じくして、ジャーナリストの真田が、99日後自殺することもピッピは予言します。

真田自身は、その予言を面白がりマスコミを煽り99日後の審判の日、つまり自殺することをTV中継させます。本人もその自殺を予知された時間直前まで軽はずみな言動を繰り返し、全く自殺する気配を見せません。しかし、真田はTV中継中に高台から飛び降りてしまいます。安全の為に高台の下にマットが敷かれており、彼はそこに転落しましたが、亡くなってしまいます。死因は、転落の衝撃によるものではなく首を絞められたことによるものです。あらゆることを的中させる驚異のシステム「ピッピ」は死ぬことは的中させましたが、死因によると自殺ではなく他殺の可能性が高まりました。ピッピはその予知を外したのか、それとも・・・。

また、進化しなければ人類は滅亡するという預言を与えられた時からほどなくして、海上を進むある大型船の中で、命の危機に瀕した猿が突発的な進化の兆しを見せます。世界はどうなっていくのでしょうか。

この作品は恐ろしいほどの才能がちりばめられた傑作SFマンガです。残念ながら「知る人ぞ知るマンガ」という枠にとどまってしまっていますが、まだ本作を読んだことが無い人は是非手に取るべき作品です。本当に出来が良く続きが気になる作品です。



3件のコメント

息子はスルーですかパパ
ピッピ
コミックキュー確かにあったなぁ この預言者ピッピはいいよね。星新一が造りそうな話だよね
ふっこ
預言者ピッピとはマニアックですね!!! でも確かにこの漫画は多くの人に読んでもらいたいかも

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