＃1014 中から、溢れて。

あなたのとろけさせる魔法が好き。
あなたと、洋食屋さんに入った。
メニューが、多すぎて迷う。
それが楽しい。
ハンバーグ、オムライス、カレー。
やっぱり、このベスト３は外せない。
前菜は、丸ごとトマト、野菜サラダ、きのこのポタージュスープ。
選手層があつすぎて、なかなか新人の入り込む余地はない。
あなたが、シェフのように、取り分けてくれる。
どんなにテーブルに並んでも、あっというまに、シェアされていく。
下げるウエイトレスの女性が、手際に見とれる。
大きいお皿は残さず、小皿に分けてくれる。
小皿に分けたけど、また盛り付けが、レイアウトされている。
カレーは、小さいカレーになっている。
ハンバーグは、最初からそういう盛り付けだったかのよう。
新たな盛り付けに、なっている。
今日の発見は。
オムライス。
オムライスは、「乗せ」と「巻き」が選べる。
「乗せ」は、最近のふわふわオムライス。
「巻き」は、薄皮の昭和オムライス。
むしろ最近では、「巻き」が少なくなっている。
今日の気分は、「乗せ」。
あなたが、玉子をひとなですると、真ん中から、見事に二つに分かれた。
また。
あなたは、玉子のボタンを外した。
まるで、ジッパーを下ろすように。
デザートは、かための昭和プリンと、ミルクレープと、フォンダンショコラ。
デザートもまた、見事な取り分け。
デザートの取り分けは、料理の取り分けより、小さいだけに、難しい。
それでもあなたは、芸術的に、取り分ける。
最後に、フォンダンショコラが、届いた。
あなたが、魔法をかけた。
フォンダンショコラが、ナイフを入れていないのに、中からチョコレートが、溢れ出した。
セクシーだった。
あなたは、チョコレートにも、魔法をかけた。