#1026 馬車の手綱を、とるように。
あなたの馬車の手綱をとる姿が好き。
あなたと、鉄道博物館に行った。
あなたは、小学生の時から、博物館好き。
大阪の交通科学館に行っていた。
友だちと行くこともあれば、一人で行くこともあった。
日曜日は、子どもたちで溢れていた。
今日は、「バス祭り」が、開催されている。
子どもたちは、バスが大好き。
女の子も多い。
鉄道ファンは、男の子とは限らない。
私も、鉄道は大好き。
なんだろう。
ロマンチック。
電車の中で、本を読むのが好き。
電車の中で本を読むと、家で読むのと違う世界に出会える。
19世紀の貴族の令嬢は、旅行する電車の中で、本を読んでいた。
そう、あなたが教えてくれた。
あなたが言うと、知識というより、思い出のように感じる。
まるで、見てきたかのよう。
「運転シミュレーター完売」のプレートが下がっていた。
実は、やってみたかった。
やっぱり、人気だった。
「14時から予約のお客様」と呼ばれた。
あなたが、向かった。
えっ。
あなたは、先に予約していてくれた。
黙っているのが、あなたのトリック。
トリセツを、何度も確認した。
あなたが、運転士さんの制帽をかぶせてくれた。
在来線。
発進。
左手が、ハンドル。
右手が、ブレーキ。
押せばいいのか、引けばいいのか、わからなくなる。
画面に、風景が流れる。
速度と、駅までの残り距離が表示される。
見ている余裕は、まったくない。
駅が近づいてきたので、ブレーキをかけた。
停止線をはるかオーバーして、止まった。
こんなに、止まらないものであることがわかった。
今度は、あなたが次の駅まで。
あらっ。
あなたが運転している姿は、馬車の手綱をとるクラーク・ゲーブルだった。
やっぱり、貴族の時代から、あなたは生きていた。