#1032 背が、伸びて。
あなたの瞑想が好き。
あなたと、今日はお寺に行く。
このあたりは、かつてお寺が多かった。
今、再開発で、あちこちで工事の音が響いている。
毎週、景色が、替わっている。
平日は、外国人の観光客で賑わっている。
週末は、さらに多い。
でも、土曜日の午後になると、一気に、観光客の姿がなくなる。
お店も、シャッターを下ろす。
不思議な街。
ある、マンションで、あなたは立ち止まった。
瀟洒なマンション。
入口に、アールヌーボーのおしゃれなアーチがある。
高級マンションか、もしくは、高級エステ。
えっ。
あなたは、中に入った。
お寺に行く前に、エステによるのかしら。
「こんにちは」
あなたは、1軒の入口を開けた。
そこだけが、不思議なことに、木の扉になっていた。
しかも、年代物の経年美化のある扉だった。
「お待ちしていました」
中から出てこられたのは、ご住職だった。
そうだ。
忘れていた。
今日は、お寺にマインドフルネスに来たのだった。
部屋に上がる。
あなたは、いつのまにか白のソックスに履き替えていた。
薄いソックスでなければ大丈夫な所。
あなたは、あえて、履き替えるということで、敬意を示した。
ご住職による、マインドフルネスの瞑想が始まった。
10分×3回。
あっという間だった。
「よく寝ちゃうんですよ」
とあなたが言うと、
「私も、寝ます」
とご住職が笑っていた。
障子から指す柔らかな日が、あなたを後光のように照らしていた。
あなたの背が、いつもより、さらに高くなっているのを感じた。