#1038 私の中の、あなたのGPS。
あなたのGPSが好き。
あなたと、本屋さんに行った。
銀座のハズレにある小さな本屋さん。
思わず、通り過ぎそうになった。
振り返ると、あなたがいなかった。
一人では、現地集合できなかった。
昭和レトロの建物の一階。
貴重な、建物らしい。
その本屋さんの風情は、本屋さんではなかった。
まるで、ブティック。
しかも、ショーウインドウ。
レジスペースまで含めても、8畳ひと間。
しかも。
本がない。
お店の中央に、小さな器が並んでいる。
よく見ると、レジの上に、申し訳無さそうに並んでいるのが、本だった。
1週間に、一冊しか本を置かない、本屋さん。
どこにも、看板がない。
なのに、お店は、賑わっていた。
この人たちは、どこで、そうやって知るのだろう。
サイトも、ない。
お店に入ると、ご主人は、不在だった。
「おひさしぶりです」
レジの女性が、あなたに声をかけた。
「今、ここにいるの」
あなたは、驚いて、微笑んだ。
以前、別のファッション系のミュージアムで、話をした女性だった。
あなたは、そういうことが多い。
まもなく、ご主人が、お店に戻ってきた。
このご主人とは、銀座で、よく遭遇する。
「きっと、GPSを埋め込まれてますね」
「双方向型です」
お互いが、衛星で引き合っている。
私の中にも、あなたのGPSが、入っている。