#1042 美しいトラップに、ハマる。
あなたの偵察が好き。
あなたと、レストランに行った。
自動車メーカーが、運営している。
最高級車のオーナーの書斎というコンセプト。
クルマを、探した。
置かれていなかった。
ショールームでは、なかった。
壁には、本が並んでいた。
アート、建築、自動車と、分かれていた。
料理も、こだわりがあった。
そのオーナーさんだったら、こんな風にこだわるだろうというお料理だった。
あなたが、化粧室に、立った。
あなたが、化粧室を探して、本棚の後ろに回った。
私は、知っている。
あなたが、化粧室に立つ時は。
探検している時。
化粧室を探すふりをしていると、怪しまれない。
あなたは、どこにいても、シャーロック・ホームズ。
あなたの目的は、化粧室では、なかった。
本棚の裏側で、あなたがスタッフと話している。
ワクワクする。
きっと、あとで、見せてもらえる。
「化粧室も、なかなか、面白いよ」
あなたが、笑った。
化粧室に、入った。
驚いた。
天井に、数百台のミニチュアカーが、展示されていた。
そこは、化粧室ではなく、博物館だった。
お会計を済ませた後、あなたとマネージャーさんが、本棚の後ろも案内してくれた。
自動車の工具に混じって、ゴルフボールがあった。
サポートをしているプロゴルファーのものだった。
「もし、よければ……」
マネージャーさんは、隠し部屋を案内してくれた。
そこは、レーサーでもある会長の個人的な部屋だった。
もちろん、すべての人に案内しているわけではない。
このレストランがある理由が、わかった。
美意識のある人を、見つけ出すトラップだった。