#1044 土用の丑の日の、イリュージョン。
あなたのイリュージョンが好き。
あなたと、鰻のひつまぶし。
大型台風が接近している中、土用の丑の日で、賑わっていた。
ここは、鰻を育てているお店。
おいしいわけだ。
肉厚。
オプションで、八幡巻きを頼んでくれた。
ごぼうに、鰻が巻いてある。
ひつまぶしを、味変しながら、味わった。
しまった。
こんなに味変するなら、ご飯を大盛りにしておけばよかった。
それでも、ご飯は、普通より多めに入っている。
山椒の、香りがいい。
そんなに痺れない。
と、思っていたら、後からしびれが来た。
あなたに、似ている。
満足感。
大盛りにしなくて、良かった。
大盛りにしていたら、歩けなかった。
食後、ループトップテラスに出た。
ムッとしたけど、風が強いので、いくぶんしのぎやすかった。
タワーが見えた。
若者たちのカップルと、外国人のカップルが、写真を撮っていた。
次の瞬間、私の頭から、鳥が飛び立った。
鳥では、なかった。
私のサマーハットだった。
サマーハットのひさしが多いいタイプだった。
台風の風で、煽られた。
あっ。
私のサマーハットは、円を描きながら、空中を高く舞った。
ビルの外に、飛び出した。
あまりに、帽子の舞い方がきれいなので、見とれてしまった。
私は、笑っていた。
屋上の外に飛び出した帽子は、ブーメランのように、円を描いて、戻ってきた。
屋上にいるカップルが、私の帽子を、追いかけてくれた。
帽子は、遊ぶように、避けて飛んだ。
そして、再び、屋上の外へ。
あなたは。
アタフタしなかった。
空中に、指を立てた。
すると、二度も屋上の外に飛び出した帽子が、戻ってきた。
なんと。
あなたの指に、帽子がふわりと、止まった。
周りから、拍手が起こった。
イリュージョンを、見せてくれた。