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#1045 記憶の共有。

あなたの記憶再生が好き。
あなたと、レストランに行った。
ウエイトレスの女性が、席に案内してくれた。
女性が、説明しようとして、声を出した。
「あっ!」
その声に、あなたは反応した。
あなたに、気づいたのか。
「前も、いらして、いただけましたね」
あなたに気づいたわけではなかった。
あなたが、来たことを覚えていた。
あなたは、微笑んだ。
「よく、覚えていてくれたね」
「たしか……あの席でしたね」
彼女は、指さした。
「そう、あのテーブル」
あなたの中で、映画のプレイバックのように、逆回し再生された。
「雨でしたね」
彼女は、続けた。
あなたは、外を見た。
今日は、晴れ。
「傘を、預けたね」
あなたの再生画像と、一致した。
「また、お会いできて、嬉しいです」
一緒に、再生するのは、楽しい体験。
「オーダー、お願いします」
「ガス入りのミネラルウォーターですね」
彼女は、オーダーも覚えていた。
「ミスト・インサラータ2つと、フォカッチャ2つで、よろしいですか」
その通りだった。
「テンポよく、どんどんお出しすればよろしいですね」
彼女は、終始笑顔だった。
帰り際、私のスマホのショップカードに、ポイントをあなたが頼んでくれた。
「ポイントでしたね。こちらを、読み取り下さい」
彼女が、指さしたバーコードは、料金よりも多めだった。
「こちらよろしければ、ご意見を」
感想を書き込めるQRカードを、あなたに渡した。
そこには、メモが添えられていた。
「また、お会いできて、嬉しかったです」
スピード感のあるワンシーンが、私はそばで見ていて、嬉しかった。



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