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#1048 アンテナが、立って。

あなたのアンテナが好き。
あなたと、デパートの「フランス展」で、ジェラートを味わった。
そう言えば。
さっき、ホテルの会席料理のデザートで、生姜入りわらび餅を食べたところだった。
「さっき、わらび餅、食べたばかりなのに」
なんて、言わないあなたがいい。
和と、洋は、別腹。
この後は、同じデパートの中にある美術展に行く予定。
「フランス展」は、寄り道だった。
美術館へ降りるエスカレーターを探した。
あなたが、立ち止まった。
同じフランス展に出店しているインテリアショップのお皿の前だった。
あなたが、見ていたのは、お皿ではなかった。
キャンドルだった。
キャンドルは、本物の炎ではなく、LEDだった。
あなたは、炎を見つめていた。
私も、つられて、見た。
あっ。
炎が、揺らいだ。
「揺らぐでしょ」
ショップの女性が、後ろで微笑んだ。
あなたが、目を止めたのは、炎の揺らぎに気づいたからだった。
そして、エスカレーターへ。
あなたが、また立ち止まった。
あなたは、エスカレーターとは、逆の方向に歩いていった。
そこは、アートギャラリーだった。
壁に、書が、飾られていた。
味のある書だった。
デパートのアートギャラリーは、なかなか入りにくい。
値札のついているギャラリーは、展覧会と違って、入りにくい。
お店にいたスタッフが、あなたに気づいた。
画廊の人というより、アーティストっぽい人だった。
あなたに話しかけようか、迷っていた。
名刺を、手に持っていた。
あなたが、真剣に味わっているので、その人も、なかなか話しかけなかった。
その気配に、あなたが気づいた。
「字も味があるけど、額も味がありますね」
あなたは、字だけではなく、額も見ていた。
「廃材で、作ったんです」
その人は、額を作った廃材アーティストだった。
あなたは、遠くから字に気づいた。
そして、額に気づいた。
あなたのアンテナは、いつも美しいものに、反応していた。



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