#1055 さっと、にっこり。
あなたのスーパープレイが好き。
あなたと、東京駅。
これから、新幹線に乗る。
海外からの観光客と、国内の観光客でごった返している。
家族連れも多い。
東京駅は、混雑しているけど、お弁当の種類が多いので、好き。
あなたと、お弁当を選ぶのが、楽しい。
もう、そこから、旅は始まっている。
お弁当を、一生懸命選ぶ私を、許してくれるあなたが好き。
あなたも、私以上に、真剣に選んでいる。
1軒のお店で選ぶのではなく、多くのお店から選ぶのだから、大変。
しかも、のぞみの時間は、決まっている。
ある時は、改札が大行列になっていて、走った。
二人で走るのも、楽しい。
あなたには仕事の移動なんだけど、仕事の移動ですら、あなたは旅にしてしまう。
楽しんでいる。
「いつも同じお弁当」に安住しないところがいい。
今日のお弁当は、1ヶ月前から、心の中で決めていた。
ところが、また、想定外のものを見つけてしまった。
そして、お弁当屋さんの行列も、長かった。
レジの前に行ってから、迷っている。
仕方がない。
それも、観光の楽しみ。
改札の行列が長いので、別の改札に走った。
その時。
あなたが、女性に、声をかけた。
女性は、振り返って、にっこり微笑んだ。
あなたも、微笑みを返した。
あまりの速さに、プレイバックが、間に合わない。
振り返ったのは、お母さん。
抱っこしている女の子の靴下が、落ちた。
あなたがそれを拾って、声を掛けた。
この雑踏の中で。
普通は、誰も気づかない。
お母さんも、走っていたのに。
あなたが、さっと拾って、さっと声を掛けて、さっと渡して、にっこり微笑む。
スーパープレイを、見せてもらった。