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#1070 この時の、ために。

あなたの先回りが好き。
あなたと、パーティー。
会場は、前のほうに、来賓用の着席用のテーブル。
後方に、立席用のハイテーブルが置かれている。
事務局のスタッフが、着席用のテーブルに案内してくれる。
パーティーで、あなたは、座らない。
座ると、人と話せないから。
こちらも、動きにくい。
相手も、話しかけにくい。
テーブルは、年輩の方用と、考えている。
立って、会場を回る。
あなたは、じっと、立っていることもない。
そう言えば。
入口の、ドリンクも、受け取らなかった。
ドリンクを持っていると、握手と名刺交換が、できないから。
ドリンクは、乾杯まで、要らない。
主催者の挨拶が、始まった。
あなたは、後方の正面に立った。
入口は、後方上手側なので、邪魔にならない。
あなたは、ホストのスピーチに、リアクションしている。
あなたが、そこに立っている理由。
ホストの視野に入ること。
リアクションをすることで、ホストが話しやすくすること。
後方のハイスツールの周りでは、同僚と喋っている人もいる。
スマホを、必死にチェックしている人もいる。
あなたは、まるでホストと二人で話すように、真剣に聞いている。
ホストのお話は、いいお話だった。
来賓のスピーチが始まった。
ホストがあまりにいいスピーチだったので、緊張している。
同じ話を、何度も繰り返している。
それでも、あなたは、退屈な顔をしない。
学芸会を見守る先生の気持ちで見ている。
乾杯のグラスが、回ってきた。
あなたは、私に、紙ナプキンをくれた。
このときのために、自分用と私用の2枚を、入る時に受け取っていた。



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