#1085 人違いでも、ゴキゲンに。
あなたの人違いへの対応が好き。
あなたと、神社にお参りに来た。
三が日をずらしても、大勢の人がいる。
「すいません」
と、あなたは男性に話しかけられた。
その声のトーンで、ファンの人であることがわかった。
「はい」
感じよく、あなたは、振り返った。
若いカップルの男性が、緊張しながら、話しかけていた。
「いつも、拝見してます」
やはり、ファンの人だった。
「ありがとうございます」
「この間のレース、凄かったですね」
レース……?
あなたは、すぐ理解した。
あなたと名前の似たレーサーが、いる。
この人は、その人と間違えている。
顔が似ているのではなく、名前が似ているのに、間違えている。
思い込みとは、そういうものだから、しょうがない。
そんな時。
あなたは、否定しない。
相手が思い込んでいる人を、最後まで、演じきる。
自分が、誰であるかに、あなたはこだわらない。
相手がそう思うなら、それに任せる。
失礼だと、むっとしない。
それどころか、少し楽しんでいる。
ここで否定したら、カップルの彼女の前で、メンツを潰してしまう。
後で、人違いであることに気づくのも、楽しい。
気づかないのも、楽しい。
レーサーと、間違えられるのは、面白い。
あなたの生き方は、まさにレーサーと同じだから。
ということは、話しかけた人は。
「お会いできて、ラッキーでした、○○○○さん」
彼は、正確なあなたの名前を呼んだ。
間違っていなかったのかもしれない。