» page top

#1086 知らんぷりのリード。

あなたの知らんぷりのリードが好き。
あなたと、電車に乗っている。
電車は、混んでいた。
座れることはない。
電車の構造が、昔と変わった。
ドアの横のスペースが、広くなった。
以前は、椅子を少しでも作るように、ドアギリギリまで、椅子があった。
最近の電車は、椅子を減らして、ドアからの乗り降りを、少しでも早くできるように、改良された。
私は、そのドアと椅子の隙間に、立った。
このスペースが、私は好き。
座るより、むしろ、落ち着ける。
ドアの乗り降りの邪魔にも、ならない。
もたれるわけではないけど。
本も、読みやすい。
しかも。
眼の前には、あなたが、いる。
あなたに、包みこまれている感じがする。
おや。
気がつくと、私は、いつもこのコーナーに居る。
自分で、ここに来た記憶はない。
記憶のカメラを再生した。
最初にそのコーナーに入ったのは、あなただった。
そして、あなたは、私をリードして、このコーナーに、誘導してくれた。
私が、このコーナーが好きなのを、知っていて。
だから。
いつも、私は、どんなに混んでいても、ここにいる。
混んでいる中での、あなたのリード。
気がつかなかった。
気がつかないうちに、してくれているあなたのリードに、幸せを感じた。
あなたは、知らんぷりをしている。
だから、私は、このコーナーが好きだった。



【中谷先生のおすすめ電子書籍TOP3】 紹介記事はこちらからどうぞ