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#1097 身体に、委ねて。

あなたの書くところが好き。
今日は、作家の集まり。
美人女性作家が、あなたに質問した。
「ネタは、どうやってひらめくのですか」
その質問には、「そんなに、次から次へと」という上の句が隠されている。
よく聞かれる質問。
それでも、あなたは、初めて質問されたように答える。
「よく聞かれるんですけど」
と前置きしない。
そういうと、聞いた人が、よく聞かれることを、また聞いてしまったと、がっかりするから。
あなたは、答える。
「手が、勝手に、考えてくれるんです」
質問した人は、たいていキョトンとする。
「手が、勝手に……」
これは、あなたがウケ狙いで、言っているのではない。
私は、見ている。
あなたが、書いている時、考えている気配は、ひとつもない。
むしろ。
驚いている。
自分で書きながら、驚くというも不思議な話。
でも、事実。
あなたの脳は、手が書いた話を読んで、驚いている。
脳が書いているのではなく、手が書いている。
脳は、書くことを、手に委ねている。
あなたの脳は、器の大きい上司。
書く手に、あれこれ指示を出さない。
手が、書きたいように書いている。
委ねられた手は、思う存分、書いている。
あなたの脳は、それを邪魔しない。
ときどき、あなたは、書きながら、呟いている。
「そうなの……」
驚きながら、笑っている。
それを見るのが、私は好き。



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