#1098 二人の、総支配人。
あなたのサービス精神が好き。
あなたと、ホテルのビュッフェに。
開始早々は、ビュッフェ台が行列になる。
その間、あなたは、全体を把握する。
ドリンクと、カトラリーの用意をしてくれる。
台の下の器や、デザート、スタッフの動きを観察する。
一人の女性のお客さんが、あなたに訪ねる。
「これは、何ですか」
スタッフと、間違えられた。
あなたが、チェックする姿勢だったから。
立ち居振る舞いも、ホテリエ以上にホテリエだから。
きっと、総支配人に違いないと。
「こちらは、花びらのように、削ったチーズです。美味しいですよ」
「美味しいですよ」は、もはやお客さんではなく、スタッフのコメント。
すると、女性は気づく。
「あっ、ホテルの方ではないんですね。失礼しました」
「なんでも、聞いて下さい」
あなたは、微笑む。
そうしているうちに、また。
「すいません」
また、間違えられた。
「本、読んでます」
今度は、あなたの本を読んでいる読者の人だった。
「写真、撮りましょうか」
と言ったのは、あなたの方だった。
「いいですか」
「どちらのお席ですか」
「向こうの個室なんですけど」
「伺いましょう」
個室に入ると、歓声が上がった。
あなたが席に戻ると、にこやかな紳士が、近づいた。
本当の総支配人だった。
「座ってください」
総支配人が、あなたの隣に座った。
二人の総支配人が、並んで微笑んでいた。