#1109 セオリーとは、逆に。
あなたのオーダー順が好き。
あなたと、おうどんで、ランチ。
六本木のビルのエレベーターを上がる。
扉が開くと、大勢のウエイティングの人。
あなたがお店の人にアイコンタクトをすると、右手の方に案内される。
格子戸をくぐると、石畳の路地。
その先に、また格子があって、和室があった。
和室には、床の間があり、お軸には、万葉集の和歌が書かれていた。
雪見障子を開けると、縁側があり、縁側の外側には、ヒノキの露天風呂があった。
露天風呂には、お湯が張ってあり、湯気が上がっていた。
脇には、バスタオルと、浴衣が置かれていた。
正面には、ミッドタウンのビルがそびえていた。
ここは、温泉旅館か。
いや、おうどん屋さん。
そして、六本木。
頭が、ぐるぐるした。
あなたが、メニューをオーダーした。
お店のシグニチャーサラダ。
30種類以上の具材が細かく刻んで入っているサラダ。
海鮮も、おうどんを刻んだものも、底には、温泉卵も。
あなたが、小気味よく、かき混ぜる。
ふんわりしていたサラダは、シュッと沈んだ。
これが、和え終わった証拠。
そして、おうどん。
「まず、すき焼きのおうどん。15分後に、カレーうどん。その15分後に、きつねうどん」
あなたは、オーダーした。
3種類食べることができるのが、いい。
しかも、あなたのベスト3を、体験できる。
不思議なのは。
普通、薄味から食べるのがセオリーなのに、あなたは、逆にオーダーをした。
まず、すき焼きのおうどん。
美味しい。
もはや、すき焼きを越えている。
次に、カレーうどん。
カレーとはまた違った、味わいがある。
そして、最後に、きつねうどん。
あなたが、これをラストに持ってきた意味がわかった。
シンプルが、一番深いということを、味あわせてくれた。