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#1112 今はまだ、立たないで。

あなたの帰り方が好き。
あなたと街の洋食屋さん。
御夫婦で経営している小さなお店。
ご主人が厨房、奥さんがホール。
厨房は、カウンター前と、奥にも調理スペースがある。
食事が終わって。
お会計は、テーブルではなく、レジで。
帰ろうとしたけど、あなたは、立たない。
ふと見ると。
レジに向かう、カップルがいた。
彼女のほうが、お店の人と話している。
「美味しかったです。また来ます」
の会話。
お店の人と話せて、彼女は、楽しそうだった。
良かった。
今日のデートは、成功だった。
たぶん。
初めてのデート。
あなたは。
彼女の初めてのデートを、応援した。
アシストした。
アシストって、凄い。
シュートより、凄い。
見えない分だけ、奥が深い。
さて、次は、私達がレジに向かう番。
あなたは、立たない。
別のテーブルのカップルが、「すいません」と奥さんを呼んだ。
デザートのオーダーだった。
あなたは、そのテーブルのカップルが、デザートのオーダーで奥さんを呼ぶのを予測していた。
もし、レジに立っていたら。
また、カップルが呼ぶ時間を待たせることになるから。
オーダーが、終わった。
それでも、あなたは立たなかった。
あなたが、立ったのは、ご主人が奥の調理場から戻ってからだった。
帰る時に、ご主人と奥さんに、「ごちそうさま」と顔を見て伝えるために。



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