#1126 話しかけた、理由は。
あなたの話しかけ方が好き。
あなたと、ビュッフェ。
メニューが、多い。
和洋中、すべて揃っている。
危ない。
すでに、ビュッフェ台には、行列ができている。
私は、並びながら、どの料理にしようか考えた。
あなたは。
あなたは、並んでいなかった。
全体を、眺めていた。
まるで、総支配人のように。
一人のお客さんが、あなたになにかたずねている。
あなたは、そのお客さんに「お箸」を持ってきてあげていた。
その女性は、あなたがお客さんであることに、気づかないままだった。
最初のお皿を持ってテーブルに戻ると、私の分のカトラリーも、お箸も、ドリンクも、スープも、あなたが用意してくれていた。
私の分も、用意しながら、あなたは、自分用のサラダも、きちんと用意していた。
並んでいた私と、テーブルに戻ったのは、同時だった。
あなたは、ラインナップの全体像を教えてくれた。
私は、並んでいたので、全体像が全くわかっていなかった。
あまりの種類の多さに、驚いた。
ビュッフェ台を見ると、さっきまであんなに行列だったのに、落ち着いていた。
一番混んでいる時に、私は取りに行ってしまっていた。
あなたは、空いている所を、スイスイ泳いでいた。
それは、ふだんの行動、そのものだった。
人生そのものだった。
気がつくと、まわりのテーブルが、意外に早く帰っていた。
意外ではなかった。
90分制だった。
私は、120分制だと思っていた。
長居しているお客さんの所に、「そろそろお時間です」とスタッフが案内していた。
私たちのテーブルには、その案内が来なかった。
そういえば。
さっき、あなたは、食べ終えたお皿を下げに行った時、リーダーらしき女性と、にこやかに話していた。
感じのいいお客さんになることで、時間をサービスしてもらっていた。
お皿を下げに行ったのは、話すためだった。
「もう一回、見てきていいよ」
お言葉に、甘えて、私は迷っていたスイーツを取りに行った。