#1128 描かれなかった、物語。
描かれなかったあなたの物語が好き。
あなたに、絵の描き方を教わった。
描きたくなった。
何を、描こう。
「好きなものを、描くのがいいよ」
好きなもの。
とっさに、浮かんだ。
シンデレラ城。
「いいね。描いてごらん。僕も描こう」
描こうとした。
あら、屋根は、どんなだったかな。
確か、塔みたいな物があった。
それは、ラプンツェル?
時計台は。
お城に、時計?
鐘は?
鐘は、協会じゃないの。
バルコニーは?
バルコニーは、アラジンだったかな。
いろんな物語が、チャンポンになった。
あなたも、描いていた。
愕然とした。
まさしく、シンデレラ城だった。
あなたのシンデレラ城には、階段があった。
奥から、弧を描くように、階段が続いていた。
そう。
シンデレラ城は、階段だった。
長い長い、階段。
シンデレラ城の階段は、長くないとドラマチックではない。
ということは。
シンデレラは、あの長い階段を、最初は上った。
上る時には、魔法は使っていない。
ガラスのピールで。
長い階段を。
自らの力で。
わかった。
あなたの絵には、物語があった。
物語では描かれなかった、物語だった。
私も、その階段を、今上っている。