#1133 人間として、接する。
あなたの人形との接し方が好き。
あなたと、マダム・タッソー美術館に来た。
東京タワーにあった頃、行ったことがある。
驚いた。
まるで、その頃とは、変わっていた。
格段に、進化していた。
最初の部屋に、マツコ・デラックスさんのフィギュアがあった。
ツーショットを撮ることもできる。
あなたが、ツーショットを撮ってくれた。
今度は、私が、あなたとマツコさんのツーショットを撮った。
全然、違った。
あなたは、マツコさんの手を包みこんだ。
私の写真と、比べてみた。
私の写真は、マツコさんが作り物に見えた。
あなたとの写真は、マツコさんが、本物に見えた。
よし。
作戦を、考えた。
あなたを、先に撮ることにした。
その後、あなたと同じポーズで、撮ることにした。
撮り終わって、あなたと比べて見た。
あなたと写るフィギュアは、すべてリアルだった。
私と写るフィギュアは、すべて作り物だった。
同じポーズで、撮ったのに。
リアルなのは、フィギュアではなかった。
リアルなのは、あなただった。
私は、あなたのポーズだけをマネしていた。
あなたがリアルだったのは、フィギュアを血の通った人間として、接していた。
あなたは、フィギュアとおしゃべりをしていた。
私は、ただ並んでいるだけだった。
あなたは、すべての写真で、いつも表情が違っていた。
私の写真は、全部、同じ表情だった。
だから、作り物に見えた。
作り物なのは、フィギュアではなく、私自身だった。
あなたは、表情を作ろうとすら、していなかった。
一緒に写る相手と、一体感があった。
あなたと写る草間彌生さんは、少し笑いかけていた。