＃1138 見逃して悔しがる、楽しみ。

あなたのトリックが好き。
あなたと、展覧会。
金魚を作る造形作家の方の展覧会。
前から、気になっていた。
生で、見ると。
写真や画像で見るより、はるかに凄かった。
超絶技巧は、生で見ないと、凄さがわからない。
見たつもりになっていたことに、気づいた。
見ているうちに。
最初は、水の中の金魚を見ていた。
いつの間にか。
自分が、金魚のいる水の中に、入っていた。
眺めているのではなくなった。
ホームから、アウェイになっていた。
茶の間全体を作ったコーナーがあった。
全体が、水の中だった。
茶の間を、金魚が泳いでいた。
蚊遣り豚の中から、金魚がお呼び出している。
蚊遣り豚の中では、蚊取り線香が燃えている。
しかも、煙も立っている。
水の中で。
丸い蛍光灯から、点灯する長い紐がぶら下がっている。
昭和の丸い蛍光灯も、水の中に見える。
蛍光灯の下には、ちゃぶ台が置かれて、その上には、みたらし団子やみかんが置かれている。
畳の上にも、いぐさの座布団の上にも、金魚がいる。
ここだけ、写真を撮っていい。
帰ってから、あなたが撮った写真を見せてもらった。
えっ。
みたらし団子の間に、金魚がいた。
見逃した。
くやしい。
写真撮影だったのは、見て悔しがるためだった。
凄い凄いといいながら、凄さを見逃していた。
展覧会に行く楽しみは、見逃して、悔しがる楽しみだった。