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#1159 無意識を、見られている。

あなたの意識していない普段が好き。
あなたと、ホテルのビュッフェ。
賑わっている。
まずは、おしぼりで手を浄めて、ウエイターさんに説明を聞く。
スタート時点で、大行列になる。
そんな時、あなたは列に並ばない。
列の外から、全体の料理の配置を眺めている。
今日の献立を作り上げている。
その様子は、まるで総支配人。
お箸の場所を、お客さんに聞かれている。
あなたは、ご案内している。
いつのまにか、席にカトラリーと、ドリンクが用意されている。
お箸も置かれている。
あなたを見失う。
もう、テーブルに座っている。
いつのまに。
サラダが、絵画のように、盛り付けられている。
パレットに絵の具を出すように、サラダの色合いを即興で組み合わせている。
ローストビーフの行列の間に、一瞬空いたサラダ台を見逃さなかった。
私は、サラダは混んでいると、思い込んでいた。
一皿目から、あなたを待たせてしまった。
最初の遅れは、痛い。
一人のスタッフが、名刺を持って、あなたに近づいた。
「前のホテルにいる時に、いつも会報の連載を楽しみに読ませていただいていました」
このレストランのマネージャーさんだった。
事前に、ホテルに連絡していたわけではなかった。
それでも、マネージャーさんは、あなたに気づいた。
帰りがけに、統括支配人と料理長が挨拶に来られた。
名刺交換をして、記念に写真を撮った。
「かっこいいなあ」
と料理長が呟いた。
「ロビーから、気づきました」
と統括支配人が言った。
これだから、ホテルは怖い。
常に、見られている。
マネージャーさんも、統括支配人も、料理長も、みんな嬉しそうだった。
私も、嬉しかった。



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