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#1160 ずっと、今も、ここに住んでいる。

あなたの熱量が好き。
あなたと、マンガのミュージアムに行った。
後の有名な漫画家が、下積み時代に集まって住んでいたアパート。
取り壊しになる所を、新聞記者の運動で、移築・再建された。
そこでの物語は、漫画家自身が、漫画化している。
それは、ドラマになり、映画になった。
中に入って、階段で2階に上がる。
そこは、まさに漫画で読んだのと同じだった。
映画で、見たのと、同じだった。
一瞬にして、映画の中というより、漫画の中に、入っていた。
あなたは、部屋が向かい合う長い廊下を眺めていた。
左右に並ぶ部屋に、あの人も、あの人も、住んでいた。
あなたは、予備校時代、寮生活をしていた。
それは、このアパートの物語を読んでいたからだった。
大学に入って、マンションを探した時。
このアパートと同じ名前のマンションを見つけた。
あなたは、即決した。
名前で、決めた。
エネルギーを、感じたからだ。
あなたは、初めて、ここを訪れた。
そんなに好きな場所なのに。
好きすぎた。
初恋の人に、なかなか会えないのと同じ。
ここ来るまでに、50年以上かかった。
部屋に、入れるようになっていた。
部屋に入って、畳に座った。
あなたは、感じていた。
「住めるなあ」
私には、
「住みたい」
に聴こえた。
あなたは、10代の顔になっていた。
「ライバルは?」
と、よくインタビューで質問される。
あなたのライバルは、10代の時のあなた。
10代の自分に、熱量で負けていないか、いつも自分に問うている。
あなたは、ずっとここに住んでいる。
今も、ここに住んでいる。



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