» page top

#1173 耐える、美学。

あなたの耐える美学が好き。
あなたと、プロレス観戦。
今日は、地方のホールでの試合。
椅子は、全部、パイプ椅子。
この椅子も、椅子の上のチラシも、すべてスタッフ兼選手が並べたに違いない。
油断していた。
全部がパイプ椅子ということは、場外乱闘は、すべての席が巻き込まれる。
後楽園ホールだと、パイプ椅子は、前の3列なので、椅子が吹き飛ばされることはない。
ここでは、どこまでも吹き飛ばされることとなった。
しかも、関西。
関西の観客は、リングとの境目を持たない。
観客ではなく、選手のつもりでいる。
場外乱闘に興奮した人が、パイプ椅子で、選手を思い切り殴りつけた。
一瞬、選手かと思った。
選手が、抑えに入ったので、観客であることがわかった。
その後も、試合は、何事もなかったかのように、進行した。
ファイナルのメインイベントは、地元選手だった。
凱旋試合だった。
地元の選手が、これでもかと、叩きつけられた。
会議用の長机に、頭を打ちつけられた。
長机が、真っ二つに割れた。
頭から、血が吹き出した。
床が、血でヌルヌルしている。
それでも、地元選手は、戦い続けた。
何度も、フォールされた。
そのたびに、カウントツーで、起き上がった。
倒されるたびに、地元のファンは叫んだ。
応援した。
プロレスは、耐える美学だった。
応援者は、心の中で、叫んでいた。
「もう、起き上がらなくていいよ。十分、頑張った」
「負けるな」ではなかった。
逆だった。
「もう、いい」だった。
映画では。
最後に、負けていた側が、大逆転する。
そうなるのか。
最後は。
地元選手は、意識をなくすように、負けた。
大歓声だった。
「よくやった」
「ありがとう」
「自分も、頑張る」
その直後、吹き出る汗と血のまま、サイン会で握手をしていた。
あなたが、私をここに連れてきてくれた意味がわかった。



【中谷先生のおすすめ電子書籍TOP3】 紹介記事はこちらからどうぞ