#1185 アペリティフのような。
あなたのアペリティフのやり取りが好き。
今日は、ホテルのレストランへ。
コートとバッグを預けるために、クロークを探した。
宴会場をかかえた規模のホテルだと、クロークはあるはず。
クロークが見当たらないので、フロントであなたはたずねた。
カウンターの外にいるので、フロントマネージャーに違いない。
「レストランを利用するので、コートと荷物を預けたいのですが」
「レストランを利用するので」と一言添えているところが、あなた。
「どちらか、ご利用ですか」と聞かせる手間を省いている。
フロントマネージャーは答えた。
「それでは、レストランの方にお預けください」
あなたは、にこやかに、感謝をして、レストランに向かった。
予約の名前を告げて、
「コートと荷物を預かっていただけますか」
すると、マネージャーは、言った。
「フロントの方に、お預けください」
「?」と、私は思った。
「フロントで、レストランの方で預けてって、言われたんですけど」
と、私なら言った。
口に出さなくても、顔には出た。
あなたは。
「そうですか」
にこやかに、応対した。
すでに、あなたは、ムッとするどころか、楽しんでいた。
フロントは、レストランと、目と鼻の先にあった。
そして。
「やっぱり、こっちと言われました」
みたいな言い方は、しなかった。
「レストランで、こちらの方へお預けくださいとのことでした」
ホテルのスタッフよりも、あなたの言葉遣いが丁寧だった。
なによりも、にこやかだった。
「一体どっちなんだ」という表情は、1ミリもなかった。
「それは、失礼しました」
さっきと同じフロントマネージャーは、丁寧に預かってくれた。
「じゃあ、なんで、さっきは預からなかったんだ」なんて、ひと言も言わなかった。
もう、素晴らしい食前のシャンパンを飲み干した気分だった。





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