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#1213 始める前に、始まる。

あなたの本番前の雑談が好き。
あなたは、今日は、企業の研修。
始まる前から、あなたの研修は、始まっている。
研修の開始時間は、13時半。
13時に、会場のセミナールームに入る。
事務局のスタッフさんと、雑談する。
スタッフさんは、始まる前の雑談を楽しみにしている。
早めに、セミナールームに入る。
「どうぞ、前の方から」
前の席を勧める。
そう言われると、座りやすい。
前の方に座った人と、話し始める。
話しかけるというのでもない。
いつのまにか、話し始めている。
しーんと静まり返っている部屋より、誰かが話している部屋のほうが、あとから来た人が入りやすい。
会話は、最高のBGMになる。
最初の男性と話している所に、二人目に女性が入ってきた。
「いい声の響きですね」
あなたは、女性の声ではなく、声の響きを聴いていた。
「声が大きいって、言われるんです」
女性の表情が、明るくなった。
「バレーボール部ですか」
部活で、一番声を出すのは、バレーボール部だ。
「コーラス部ですか」と言わない所が、あなたの想像力の豊かさ。
「弓道です」
と、彼女は答えた。
弓道は、応援で後輩が声を出す。
それで鍛えられたのか。
「弓は、ツルネで決まりますから、あなたの声は、弦の響きですね」
彼女は、弓道の話ができる人に久しぶりに会った表情になった。
「そろそろ、お時間です」
事務局の人が、言った。
いつのまにか、全員が集まっていた。
雑談で相手と近づく研修が、始まる前に、始まっていた。



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