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#1236 たまたま、覚えていただけ。

あなたの少年の好奇心が好き。
あなたと、チンチン電車に乗っていた。
青い目の手作り刃物鍛冶親方のお店の帰り道。
チンチン電車に揺られながら、鍛冶のカンカンカンという音が、幻聴で響いていた。
今度、ここに包丁を買いに来ようと思った。
犬釘のことを、思い出していた。
犬釘という名前が、可愛らしい。
本当に、頭の部分が、犬の形をしていた。
「もともとは、犬好きのイギリスで生まれたからね」
と、あなたは教えてくれた。
鉄道を作ったのも、イギリス人。
蒸気機関車が生まれて、レールができたのは、それからずっと後だったと、あなたは教えてくれた。
それまでの鉄では、蒸気機関車の重さを支えられなかったらしい。
蒸気機関車が、より硬い鉄を生み出した。
いつも、不思議に思う。
あなたは、どこでそれを勉強したのか。
「勉強?」
あなたは、微笑む。
そう、そこ。
あなたは、勉強なんて、していない。
勉強をしている意識がない。
カウンターに置かれていた犬釘に関心が行くように、あなたは森羅万象に好奇心を持っている。
ただ、好奇心をもっているだけ。
「記憶しよう」などという意識は、微塵もない。
あなたが、いろんなことを知り、覚えているのは、記憶力ではない。
好奇心だけ。
あなたは、子どものように、見つめる。
自動的に、あなたのドライブレコーダーに、残っていく。
何かのためでもない。
自分が、面白いと感じたものを、見つめているだけ。
「今日は、紋日なんだね」
一瞬見えた神社に、露店が出ていた。
「今日は、田植えのお祝いの日か」
チンチン電車に揺られながら、今もあなたは何かを見つめている。
そんなあなたを、私は、見つめていた。



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