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#1258 男の子が、泣いている。

あなたの切ない表情が好き。
あなたと、現代美術館に、来ている。
事前に、図録で観てきた。
実物を観ると、違う。
意外に、大きいこともある。
意外に、小さいこともある。
事前に図録を観ることの良さは、実際に見た時との、違和感に気付けること。
次の部屋から、声が聞こえてきた。
美術館が流している声ではなく、観に来た人の声だった。
その声は、泣き声だった。
これか。
巨大なしゃれこうべが、積み上げられていた。
その間を、通り抜けていく。
こうなると。
こちらが観ているより、しゃれこうべに観られている。
泣いていたのは、男の子だった。
「ガイコツなんて、やだ。帰りたい」
お母さんが、困っていた。
スタッフが、抜け道を指示していた。
男の子でしょ。
しっかりしなさい。
私は、そう思った。
あなたは。
「一番、感情移入しているのは、彼だね」
あなたは、つぶやいた。
「彼は、その歳にして、死を感じている」
しゃれこうべが怖いということは、死の強さを理解していることだ。
動物に、死は理解できるだろうか。
「象は、象の骨を怖がるから、死の概念を理解してるね」
始まった。
あなたは、しゃれこうべと見つめ合っていた。
話し合っていた。
しゃれこうべと話すあなたの写真を撮った。
あなたの表情は、恐怖ではなかった。
悲しさでも、なかった。
切ない表情だった。
泣いていた男の子と、同じ表情をしていた。



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