#631 みそ汁に、なりたい
あなたの味わい方が、好き。
あなたが、みそ汁を飲んでいる。
あなたは、本当に、おいしそうに飲む。
世界で一番、おいしそうに飲む。
こんなにおいしいみそ汁を飲んだことがないような感じで、飲む。
料亭のみそ汁じゃない。
インスタント。
もちろん、あなたはそこに、冷凍の刻み揚げと乾燥ワカメを入れる工夫もしているけど。
特に、「おいしい」と、口に出しているからではなくて。
体全体で、「おいしい」と叫んでいる。
もはや「おいしい」という言葉では、表現できない。
感じている。
五感で感じている。
みそ汁が幸せそうだ。
こんなに、あなたに味わってもらっている。
コマーシャルに、そのまま使えそう。
言葉は要らない。
あなたがみそ汁を飲んでいるところを見ると、唾液が出てくる。
あれっ。
今、気づいた。
私は、感情移入していた。
あなたにではない。
みそ汁に。
みそ汁になって、あなたに味わってもらっている。
みそ汁が羨ましかった。
あんなふうに味わってもらえると、幸せ。
五感で味わってもらう。
あなたが五感で感じると、みそ汁も五感で感じる。
みそ汁だけではなかった。
あなたはお茶を飲むときも、おいしそうに飲む。
水を飲むときも、おいしそうに飲む。
おいしい水を飲んでるんじゃなくて、おいしく飲んでいる。