#633 長い首から、漂う
あなたの、長い首が好き。
カフェであなたと待ち合わせ。
本を読みながら、あなたを待つ時間が好き。
あなたが来た。
あなたが来たことは、すぐ分かる。
見なくても分かる。
本のページに目を送りながらでも分かる。
「何フェチ?」と、本の中のせりふがあった。
私は首フェチ。
あなたの、長い首が好き。
自分が首フェチだと、あなたに出会ってから気づいた。
本を読みながら、あなたが来たことに気づけるのは、シルエット。
シルエットでも、首の長さが分かる。
シルエットだからこそ、首の長さが強調される。
あなたの紳士的な優雅さは、あなたの長い首から漂っている。
あなたのシャツを見ていると、襟とはこういうふうに立っているものだと思い知らされる。
それと比べると、他の人の襟は、よだれかけに見えてくる。
あなたの首は立っている。
首とは、こういうものだと教えてくれる。
あなたの首は、会うたびに伸びている。
もともと長いのに、ますます伸びている。
ガラスに、あなたと私との2人のシルエットが映っている。
私の首が、前より長くなった気がする。
あくまでも、自分調べだけど。
あなたの長い首を見ていると、私の首まで長くなる。
もっと、長い首になりたい。
バレリーナの首になりたい。
白鳥の首に憧れる。
また1段階、私の首が長くなった。
さっきより、呼吸が深くなった。
あなたが、ほほ笑んだ。