#669 優しさの、ハンカチ。
あなたのハンカチが、好き。
あなたと、パーティーに出かけた。
シャンパングラスを、返す時に、いつこぼれたのか、指が濡れた。
次の瞬間、あなたが、何かを差し出している。
自動的に、受け取る。
ハンカチ。
あまりの短い事件の出来事。
もう一度、味わいたい。
映像を巻き戻す。
あっ。
何がが、濡れた。
拭かなくちゃ。
バッグから、ハンカチを出そう。
バッグから、ハンカチを出そうとする前に、あなたが、何かを出してくれた。
受け取ってから、気づいた。
あなたの、ハンカチだった。
あっ、と言った瞬間、あなたはハンカチを出してくれていた。
どこからそのハンカチが出てきたのか、見逃した。
あなたのポケットチーフだった。
そのタイミングは、ほぼ同時だった。
思わず、拭いてから、よく見た。
アイロンがしっかりかかっている。
しわひとつない。
毎日入れ替えないと、ポケットに入れているだけで、しわになる。
あなたは、毎日、アイロンを仕立てのハンカチを、ポケットチーフに入れている。
あなたのポケットチーフは、飾りではなく、いつでも女性に渡すためのハンカチになっている。
女性のために、毎日、クリーニングしたてのハンカチをポケットに入れてくれている。
あなたの胸に、ポケットチーフが入っているのは、どこで濡れても大丈夫だよと、見守ってくれている安心感がある。
洗濯して返そうと、バッグに入れた。
返すまでの、お守りになった。
アイロンをかける時、気づいた。
あなたの、イニシャルが入っていた。
プレゼントに、おねだりしたくなった。