#672 半熟の太陽。
あなたの半熟の太陽が好き。
冬の朝日が好き。
朝日で、目が覚めた。
冬の一番日が短い時期にだけ、西側の寝室に、ドアから朝日が差し込む。
冬は、早起きになる。
少しずつ、早起きになって、日の出前に起きるようになる。
実際には、早起きになったのではなく、日の出が遅くなっているだけかもしれない。
目が覚める。
まだ、暗い。
もう少し寝れる。
もう、夜明けが近いはずなのに、真っ暗。
真夜中よりも、暗い。
喉が、乾いた。
加湿器の水が、エンプティになっていた。
キッチンで、ミネラルウォーターを飲む。
もう一度、ベッドに戻る。
おや。
東の部屋の窓から、さっきまで真っ暗だった空の底が、ほのかに赤い。
黒の上に、赤が乗っている。
東京にも、地平線がある。
東京の地平線は、ビルの形に、凸凹しているのもデザイン的でおしゃれ。
凸凹したデザインの縁が、赤くなる。
ベッドに戻るのをやめて、たったまま、窓を眺めていた。
ビルの縁の赤が、オレンジ色になっていく。
オレンジ色は、半熟の目玉焼きの色になっていく。
この夜明けの色を、あなたと一緒に、観たことがある。
心が、熱くなった。
あの半熟の太陽は、あなただった。
あなたは、私の中にのぼった半熟の太陽のように、まぶしかった。