#674 覚えず、ただ感じるだけ。
あなたの感じ方が、好き。
あなたが、映画の話をしてくれる。
あなたが話すのは、ストーリーではない。
ワンシーンですらない。
ワンシーンの中の、ワンカット。
ワンカットの中の小さな仕草。
なにげない仕草。
台本には、きっと、書かれていない仕草。
アドリブでもない。
演出でもない。
俳優の中に、その役が入り込んだ時にでた仕草。
役者と役者の中で、物語が編みだされた時に初めて生まれる二人の仕草。
あなたが、話してくれる。
「そしたら、こんな風に、言うんだ」
決め台詞ではない。
長台詞でもない。
ほんの短いひと言。
なにげないひと言。
見ていないのに、見た気がする。
あなたが「そしたら、こんな風に、言うんだ」という時。
台詞を言うまで、1秒の間がある。
その1秒の間に、あなたはその役に、入り切る。
その台詞を話しているのは、もはやあなたではない。
演じている俳優。
物語の中の役。
あなた自身を、消失させている。
あなたの感情移入が凄い。
映画を、ストーリーで見ている私が、つまらない味方をしている気がしてくる。
ストーリーと引き換えに、大事なものを見落としている。
たしかに、そんなセリフがあったことは、覚えている。
それは、覚えているだけであって、感じていない。
覚えているって、なんてつまらないことなんだろう。
感じていないって、いうことなんじゃないか。
あなたは、覚えていない。
ただ、感じているだけだから。