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#680 梅からか、あなたからか。

 あなたのスプリング・コートが、好き。
 あなたと、神社にお参りにいった。
 尾形光琳が『紅白梅図屏風』のモデルとした梅のある神社だった。
 意外にも、その神社には、梅の木は1本しかなかった。
 もっと、梅が沢山あるのを、想像していた。
 実際見ると、わかった。
 1本であるから、印象が強い。
 光琳が、多くの梅の名所から、この1本を選んだ気持ちにふれた。
 鶯が、枝にとまった。
 梅に鶯なんて、ますます、お軸を拝見しているみたい。
 枝から枝へ、忙しく、飛び回る。
 この色。
 どこかで、見たことがある。
 そうだ、あなたのスプリング・コート。
 1年で、2週間も着る機会がないスプリング・コートを羽織るあなたが好き。
 まさに、鶯色だった。
 梅は、あなたを鶯と感じているに違いない。
 この前は、黒のスプリング・コートを着ていた。
 あなたの鶯色のスプリング・コートも好きだけど、黒のスプリング・コートも好き。
 同じ形で、2着。
 襟で、鶯色と黒が、入れ替わる。
 リバーシブルであることに、初めて気づいた。
 あなたがすると、便利ではなく、遊び心になる。
 場に合わせて、変身する。
 変なことを、考えた。
 リバーシブルだと、ネームはどうやっているのかな。
 ネームが、外に出てしまったら、おしゃれではない。
 「ここ」
 あなたが光を当ててくれた。
 黒地に、黒糸で、ネームが入っていた。
 またしても、雪の中の白梅だった。
 香りが漂った。
 梅からだったか、あなたからだったか。



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