#681 困りながら、喜んでいる。
あなたの探偵の目が、好き。
あなたは、探偵。
みんなが気づいていない時、あなたは気づいている。
「おやっ」
という顔をしている。
些細な断片から、あなたの脳の本棚の中で、検索が始まる。
その時、あなたは、あなたの頭の中の巨大な本棚の間をさまよい始める。
天井までの本棚。
はしごを登って、高いところにある本棚の一冊を手に取る。
はしごを降りないで、ページを開く。
「ビンゴ」
と、ニッコリ微笑む。
その時のあなたのうれしそうな顔が、好き。
あなたは、美の探偵。
犯人を見つけることが目的ではない。
事件を解決することが目的でもない。
あなたの中で、新しい美に出会うことが目的。
関係ない出来事が、つながってくるのを、最高の快楽にしている。
あなたにとって、美は最高の事件。
あなたは、ニュースを見ない。
どんなに大きな事件があっても、見ない。
たまたまついていたテレビの画面の隅っこに写っているアート作品には、目を留める。
地面から、1ミリ顔を出したタケノコの先っぽを、あなたは見つける。
見つけただけでは、あなたの美の旅は、終わらない。
発見は、終わりではなく、始まり。
「大変な事になったな」
と、あなたは心の中で、つぶやいている。
また、大きな美の巨大な鉱脈の扉を開けてしまった。
あなたは、困りながら、嬉しそうにしている。
行方不明になるあなたが好き。