#683 背中に、見てもらっている。
あなたの背中を見るのが好き。
あなたが眠っている。
あなたの眠っている時の背中を見るのって、どうしてこんなに幸せになるのだろう。
広い背中。
深い呼吸。
まるで、宇宙のような背中。
抱きつきたくなる気持ち。
眺めていたい気持ち。
二つの欲望が、私の中で、ぶつかりあう。
あなたが本を読んでいる。
本を読んでいる時の背中が好き。
この瞬間、あなたは、宇宙に飛び立っている。
本の世界の中を、自由に飛び回っている。
あなたの背中は、スクリーン。
映画館の超特大のスクリーン。
あなたが今読んでいる本の物語が、あなたの背中のスクリーンに、映し出される。
あなたが、歩いている。
歩く時のあなたの背中が好き。
スーツを着て歩いているだけなのに、マントが見える。
マントが翻っているのに、あなたの肩は、まったく動かない。
水平線を、漂っている。
私は、あなたの背中を、ひたすら眺めている。
眺めることで、抱きしめている。
気づいた。
私が、あなたの背中をみているのではない。
あなたの背中が、私を見つめている。
私が、あなたの背中に幸せを感じるのは、あなたの背中が私を見つめているから。
眠っている時も。
本を読んでいる時も。
歩いている時も。
いつも、私は、あなたの背中に見つめてもらっている。