#686 未来に起こることに、あなたは気づいている。
あなたの予測が好き。
あなたと、銀座の街を歩く。
4丁目交差点。
日産ショールームの2階のカフェで、抹茶ラテ。
さっき、GINZA SIXの地下2階で、七味入りの焼きたてのお豆を食べた時から、口がお抹茶を求めていた。
お抹茶口の私に、あなたは気づいてくれる。
窓から、和光ビルが見える。
あなたが、まじまじと眺めている。
あなたが、まじまじと眺める時は、要注意。
何かがある時だ。
別段、変わったものは、見当たらない。
あなたの目は、交通事故でも見たような驚きの目だ。
てっきり、交差点で、交通事故があったのかと思った。
交通事故は、なかった。
いつもどおりの、銀座だった。
自粛の反動の人が、増えているくらいだった。
あなたの目線を追った。
気づかなかった。
いつもは、屋上にある大時計が、1階のディスプレイウインドウの場所にあった。
屋上を見た。
屋上にもあった。
同じ時計だった。
違っていたのは、時間だった。
1階の時計は、2時46分で止まっていた。
道行く人は、誰も気づかない。
まるで、道端の花。
あなたは、道端の花に気づいて驚く。
この日は、3月7日。
偶然、私は、3月11日、その時間に、美術館の帰りに、その場所を通った。
忘れていた。
テレビのカメラが、2時46分の時計を、取り囲んでいた。
その時間になると、屋上から、鐘が鳴り響いた。
その時、止まっていた針が動き始めた。
密を防ぐために、何の告知もしていなかった。
あなたに、今度話そう。
カメラマンの中に、黙祷するあなたがいた。
鳥肌が、立った。