#687 幼馴染の、ように。
あなたの友達のなり方が好き。
あなたと、ホテルでランチ。
新しくできたホテル。
皇居が見下ろせるテラス。
馬場があんなところにあるなんて、今まで気づかなかった。
高層のテラスに、春風が吹いている。
この景色は、どこかで見たことがある。
そうだ。
今日発売のハイカルチャー雑誌の巻頭に出ていた。
雑誌を見て、選んだわけではない。
なぜなら、雑誌は今日発売。
あなたは、先週から、今度、ここに行くよと教えてくれていた。
春のホテルでのランチ特集。
そういえば、他のページのホテルも、あなたが連れて行ってくれた所が、3軒、出ていた。
普通、雑誌で紹介された所に行くのに。
雑誌が、あなたを追いかけている。
とすると、あの雑誌は、なかなかいいセンスをしている。
外国人のスタッフが、入れ替わりに、あなたに挨拶に来る。
とうとう、食事の後に、ホテルの中を案内してもらうことになった。
軽く案内という感じだったのに、結局、1時間以上、案内してもらった。
VIPの奥にある、シークレットVIPルームまで、案内してもらった。
あなたは、前からの知り合いのように、案内してくれる外国人スタッフと話している。
その外国人スタッフは、日本語ができないのに、まるで日本語で話しているかのように、あなたに英語で話している。
あなたも、英語なのに、日本で話しているように話している。
すべてのスペースを紹介しながら、そこにいるスタッフを、あなたに紹介する。
仲良しを、知り合いに紹介していく感じ。
スペースを紹介するというよりは、仲間を紹介していく感じ。
「あと、ここだけ、絶対、見せたい」
案内してくれる外国人スタッフは、どこまでもとまる気配がない。
このぶんでいくと、「ディナーも、食べていって」ということになりそうな予感がした。