＃688　手術、されてみたい。

　あなたの打ち合わせの雑談が、好き。
　あなたが、打ち合わせをしている。
　仕事の打ち合わせは、あっという間に、終わる。
　その後は、仕事とは、関係のない話をしている。
　あなたがするというよりは、相手の女性が始める。
　女性の話し方は、仕事の打ち合わせの感じではない。
　まるで、仕事を離れて楽しんでいる。
　プライベートで、お茶をしながら、話している感じ。
　あなたの打ち合わせは、むしろ、そんな感じになる事が多い。
　あなたは、打ち合わせが、昔は、苦手だった。
　最近、嫌いではなくなった。
　打ち合わせを、さっとすませるようになったからに違いない。
　プライベートで、話しているから、退屈しないのだ。
　女性スタッフは、デートモードに入っている。
　初対面なのに、初対面の緊張感がない。
　あなたが、緊張させないように、気を使っているから。
　彼女は、ますます、くつろいでいく。
　そういえば。
　ドラマの撮影の時、こんな事があった。
　あなたは、お医者さんの役。
　場面は、手術。
　手術着に、あなたは着替えた。
　どこから見ても、優秀な外科医だった。
　助手の看護師役の女優さんが、二人ついた。
　あなたは、すぐ二言三言で雑談して、外科医と助手という雰囲気を、準備中に作り上げた。
　助手の一人の女優さんが言った。
「こんなお医者さんだったら、手術されたい」
　もう一人の助手の女の子も、頷いた。
　その場面は、本番よりも、映画的だった。
　打ち合わせに来た女性の目。
「こんなお医者さんだったら、手術されてみたい」
と言った女優さんの目をしていた。